は息せき切って、空に何か不思議な光が漂っていると言うのだ。私は窓を開け放ち西の空を見上げた。空には確かに、オーロラ状の光のカーテンが七つ八つ縦に漂っていた。見るとそれは徐々に降るように高度を下げながら北に向かって移動している。私はすぐに追ってみようと友人に伝え、島の最北端の断崖に車を走らせた。
断崖から見上げるとサーチライトで下から照らされたような何本もの白い光の縦の帯が北に向かってゆっくりと流れて行った。そして島から離れるにつれ、光は徐々に薄れていった。私はあちこちの気象台や、天文台に電話を入れてみた。深夜の事でありほんどとの電話はつながらなかったが、唯一電話に出た気象台の職員は、その現象についてよく分からないと答えた。我々はその光の帯が島から遠く離れ消え去るまで何時間も空を見つめ続けた。
後日、新聞に写真入りであの謎の光の帯出現の記事が専門家の解説入りで出た。それは光柱現象というもので、晴れた寒い夜、漁り火を反射した空の蜃気楼現象であり、ごくまれに日本海地方で発生する天体現象とのことであった。
過去釣り人から、大きな光の球体が高速で飛び去るのを見たという話を何度か聞いた事もある。また長い光の尾を引いて次々に流れる流星群に出会ったこともある。それらがプラズマ現象であれ、隕石の落下であれ、いずれにしても生月島の夜空では不思議な光がたびたび目撃されているのである。
<詩人>
正月の行事・鬼火[中園成生撮影]
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